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【書籍レビュー】『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を読んで、読書の本質を考える

書籍レビュー
この記事は約4分で読めます。

皆さん、最近本を読んでいますか?

実は私、以前の職場を辞めた理由の一つが「ブラック企業で本を読む時間がなくなること」だったんです。

当時は電子書籍はもちろん、スマホもない時代。

それでも読書時間を確保したくて、転職を決意したくらいの本好きでした。

しかし皮肉なことに、今の方が本を読みやすい環境にあるのに、なかなか本を手に取る機会が減ってしまいました。

最近はついついSNSやTikTokばかり見てしまい、気がつけば読書から遠ざかっています。

そんな中、三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本を見つけました。

このタイトルに強く惹かれたのは、読書ができなくなってしまった自分の疑問に答えてくれるのではないかと思ったからです。

そこで、早速読んでみることにしました。

本書の概要

この本は、仕事と読書を両立することの難しさに悩む人々に向けて書かれています。

著者自身も兼業で執筆活動を行ってきた経験から、各時代の労働者と読書の関係性を紐解きながら、日本の労働の問題点を明らかにしていきます。

読書がなぜ人生の「ノイズ」と見なされるのか、そしてどうすれば働きながらも読書を楽しめるのかを考察する内容となっています。

読書の意味の変遷

本書では、読書の意味が時代とともに変化してきたことが説明されています。

1990年代以前は、読書は「知らなかったことを知ることができる」ツールでした。

社会参加や自己探索の欲望を満たすものだったのです。

しかし90年代以降の「経済の時代」「行動の時代」では、社会のことを知っても自分には関係がないと考えられるようになりました。

それよりも自分自身でコントロールできるものに注力したほうがいいという価値観が広まったのです。

著者は次のように述べています:

しかし90年代以降の〈経済の時代〉あるいは〈行動の時代〉においては、社会のことを知っても、自分には関係がない。
それよりも自分自身でコントロールできるものに注力したほうがいい。
そこにあるのは、市場適合あるいは自己管理の欲望なのだ。

インターネット的情報と読書的人文知

著者は、現代の情報収集の特徴として「インターネット的情報」を挙げています。

これは「自己や社会の複雑さに目を向けることのない」安直な情報のことです。

対して「読書的人文知」には、自己や社会の複雑さに目を向けつつ、歴史性や文脈性を重んじようとする知的な誠実さが存在しているとされます。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか

働いていて本が読めなくてもインターネットができるのは、自分が今求めていない情報が出てきづらいからだと著者は指摘します。

働いていて、本が読めなくてもインターネットができるのは、自分の今、求めていない情報が出てきづらいからだ。
求めている情報だけを、ノイズが除去された状態で、読むことができる。
それが〈インターネット的情報〉なのである。

一方で読書には「ノイズ」、つまり偶然性が含まれます。

読者が予想していなかった展開や知識が登場するのが読書の特徴なのです。

読書の本質

著者は、読書の本質について次のように述べています:

教養とは、本質的には、自分から離れたところにあるものに触れることなのである。

知は常に未知であり、私たちは「何を知りたいのか」を知らない。

これらの言葉は、読書が単なる情報収集ではなく、自分の知らない世界や考え方に触れる機会であることを示しています。

感想

この本を読んで、私が求めていた読書体験そのものも普遍のものではないのだと感じました。

読書の意味や役割が時代とともに変化してきたことを知り、改めて「なぜ本を読むのか」を考えさせられました。

同時に、好きなことを仕事にすることの難しさも理解できました。

趣味や文化的なものが、すべてわかりやすく再現性のある文脈に取り込まれていく恐怖。

そして自分自身も再現可能だと感じてしまう不安。

これらの感覚が「好きなことを仕事にするべきではない」という意見の背景にあるのかもしれません。

おわりに

この本は、現代社会における読書の意味を考え直すきっかけを与えてくれます。

読書を楽しめなくなってしまった人、仕事で忙しく余暇が取れない人、自己啓発や教養の意味を知りたい人、自分のこれまでの生き方を見直したい人におすすめの一冊です。

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